anti-Semitics

大学で、トイレに行ったら、天井にセミがとまっていた。
最近覚えた、anti-Semiticという言葉が頭をよがった。その語義はここでは書かない。音だけである。
ナイス蚊っちを持って征伐に出かけた。一部の人間たちが夏の風物詩と主張しているからといって、私の実践がとどまるわけではない。
天井は、手を伸ばしてナイス蚊っちを持てばかろうじて届く高さである。
先っちょで、つついてみる。セミは飛び立った。なかなか網にあたらない。頭上で振り回すが、あたらない。
蛍光灯の蛍光管と土台の間に入り込んで、出てこない。
ナイス蚊っちを近づけると、少し反応して出てくるときもあるが、うまくかわす。
当たった! しかし、そのまま蝉は飛行し続ける。電撃が、効かない…?
これまでで最強の敵であるという感触が過った。
出てこない。私は手を伸ばして飛び上がるが、なかなか出てこない。微妙な高さなのだ。
ゴミ箱の裏に、うちわがあった。これを差し込めば、出てくるか。が、うちわはナイス蚊っちよりも短い。先ほどより高く飛ばなければいけない。
なかなかその場所に差し込むことが出来ない。
隣の教室から椅子を持ってきて上った。これで差し込める。差し込んだ。
蝉は飛び立ち私の腕に止まった。私は蝉を払いのけた。何度も顔を掠めて飛ぶ。私は屈んで、軌道を避けた。また蝉はピットに入った。
一方向からうちわを差込、逆側にナイス蚊っちを持っていればいい、と思った。
二三回やってみて、ついに、蝉が落ちた。
蝉はじたばたしている。
私は椅子から降り、上からナイス蚊っちで押さえつけた。
ナイス蚊っちが効かなかった、理由がわかった。
名の通り、ナイス蚊っちは蚊、蝿のサイズに最適化されている。それよりも小さい猩々蝿には時として無効であったりする。大きな甲虫でもそうだ。
そうしたとき、私は、なるべく昆虫の、腹の側を網に押し当てるようにしている。こうすることで、内側の網に肢が当たり、外側の金属には腹が当たる。そうして効率よく電流が流れる。もがき苦しむ甲虫は、のそりのそりと肢を動かすが、どこに当たろうがそれは地獄である。
今回の蝉は、総じて、頭が分厚い。そして、肢は、長くない。そのかわり、翅が巨大である。だから、頭から網に当たっても、外側の網にしか当たらないからダメージはなく、肢も内側の網まで届きにくい。
だから、翅から電流を流し込むことになった。
電流が効いている。
うちわで体を拾い上げ、網の上に乗せた。そして、うちわで腹を網に乗せ、うちわで腹を押し当てる。
なかなか最適点が見つからない。
冷房の効いた居室に戻ってきた。
何度かやっていうるうち、焦げた臭いがして、動かなくなった。
こういう場合でも、油断してはならない。生きていて、飛び立つことがあるからだ。
いろいろと角度を試しながら、さらに電撃を加える。
肢に当ててもぴくりとも動かなくなる。
ゴミ箱に棄てようかと思ったが、息を吹き返しても面倒なので廊下に棄てた。
この間は、ゴキャベリィをやった。
だんだんナイス蚊っちの電池が少なくなっているので、そろそろ交換しなくてはいけない。
そういえば、確かに、私の敵は世界、という気が最近している。
以上が夜十時前の話である。