そのような環境に置かれた彼らが、もし、誰かに何かをそそのかされたとしたら

世田谷一家殺人事件―侵入者たちの告白

世田谷一家殺人事件―侵入者たちの告白

いつも前を通る警察署の入り口のガラスのところに、トレーナーを着せられた顔なしの人形がある。近寄ってみたことは無いからわからないがおそらく世田谷一家殺人のものだろう。それで、このところこの本が話題に上っていることもあって、読んでみた。本としての叙述に思い入れはないので、犯人とその動機(つまりこの本のキモ)を確認してから、最初から読み始めた。本当だとしたら慄然とする。

27 名前: 就職戦線異状名無しさん 投稿日: 2001/01/04(木) 14:04
俺、一応エリートだから、今回の事件は他人事では済まされないなあ。
でもホント最近、東京も物騒だな。
足立区ならまだしも、世田谷だぜ。
シャレになってねーぞ。
不法入国している外国人連中じゃねーのか??

こんなのもあった。
さて、本筋とはズレるのだが、読んでいて、次の一節を読んだとき、甦る記憶があった。

……炭鉱研修生として、夜も勉強しなくてはならないのだが、おそらく、彼らはこの寮の一室に帰ると、自分にあてがわれたベッドに倒れこんでしまうであろう。
そのような環境に置かれた彼らが、もし、誰かに何かをそそのかされたとしたら……。

この一節はそのまま、10ヶ月ぐらい前の私の姿に重なった。やった実験は一切が結果に結びつかず、英語の勉強が進むばかりの日々だった。あれは、友人とオーダーメイドスーツの採寸をしに行った日のことだったか。イケセイ*1のレストラン街のとんかつ屋で、友人に、就職は外銀かコンサル、なかんづく外銀ですよ、といわれ、そうか、そういうもんかな、と思ったのが、就職を考えさせ始めた、引き金だったのだと思う。
博士課程に行ったら結婚はできないと、思ったのか、言われたのか、いまにしてはもう定かではないし、どうでもよくなった。私は、「子供を10人作ること」を人生の目標として、就職活動を進めた。結婚の条件を読んで、現世日本Homo sapiensの適応度がどのように定義されるか理解したからである。男はカネ、女はカラダ(カオを含む)、ということだ。就活は、いろいろ楽しかったり、苦しかったりしたが、やっぱり違った。俺はそれこそ、知識というものに至上の価値を置いて生きてきたのだ。時代遅れなのは明白だ。その点が、面を接した人たちとは、違ったのではないか。違うのはいいのだが、その辺を取り繕えなかったのは、私の演技力不足である。
その後、私は就職活動をやめた。挫折した。「あきらめたらそこで試合終了ですよ」といわれた。そのとおりだ。やめたのもまた、「もうこれ以上苦しい思いしたないやろ」という、別な友人によるひとことが引き金になった。
最終的にキャラだ、と彼は言った。それと重なり、そしてズレると、明暗を分けたのは、出自というか、育った環境によるのではないかと思う。屈託のない明るさともいえる。それは私にはない、といおうか、屈託がありすぎる。きょう思ったのは、私がクイックレスポンスを苦手とするのは、頭の中のNGワードリストが膨大すぎるのではないかということだ。たとえば、かなりズレるけれど、「テ・キエーロ」とかの言葉は(その和文が、だが)ほとんどLevel 4にあたる。ともかく、言おうとして用意した言葉がNGワードに該当したときの一瞬一瞬の異音が、人にはHDDエラーのように見えるだろう。そしてinvalidのレッテルを貼られる。
今晩はこれでさようなら。

*1:池袋西武の略であるらしい。