ゼミのため本郷

7時起床、8時出発、スタバで本を読んでから、10時からバイトをした。
昼、飯を食おうと学科の建物の外に出ると、老夫婦が女子学生二人と話していた。何かと思うと、相当年齢を重ねた老爺のほうが、紙袋を持っていて、標本を持ってきた、動物学教室の先生に見ていただきたい、という。二人とも小柄で、老婆は慎ましやかでかつしっかりしており、老爺は歯を失ってすこし恍惚たる雰囲気を帯びてはいたものの、どこかでカタいものがあった。外来の高齢の客はかなり困るのがいつもの常だ。話があまり通じない、というか、意識が向こう側、つまり彼ら自身の側である程度固まってしまっているため、ときどき対話が困難なことがある。困ったな、と思いつつ、お電話にて直接連絡をおとりになるが……というと、そういうのはみあたらぬといわれた。インタ……メー……という言葉が胸腔をさまよったが、いかん、このお歳の方々にそれは酷というもの、はてタウンページでたとえば調べるとして、各教官の連絡先がわかるか……不可、という判断を脳にて下し、わかりました、では、まずは事務に聞いてみましょう、事務はそういった窓口では普段ありませんが……といい、事務室にいった。このとき、電話を探すという行為に対して私はこの二人に、ちったあ話が通じそうでい、と、少しの期待を抱いていた。ここでの戸惑いのひとつは、動物分類学の教授が「動物学教室」にはいないということなのであった。事務に行って、いちおう別の講座の動物分類の教官に電話をするも留守、このあたりで事務の人たちとアイコンタクトで、どこか別のところに丸投げしようというコンセンサスが固まり、総合研究博物館というのが学内にあるからそこにいけばわかるかもしれない、地図は、あ地図は……という会話があった後で、ああ、じゃあ私が案内しますよ、と博物館まで普段ならば3分の道程を、老夫婦に合わせて10分かけて歩いた。採集をこれまでなさってきたのですか、と夫婦に問うと、長い沈黙があった後、つぎのようなことを老婆が語った。
「そうではございませんが……都内と違ってすこし面白いものが取れるものですから……私ども少し離れているものですから……(長い間があった)……科学博物館もございまして、そちらでも多様性や分類について扱っていらっしゃると聞き、わたくしはそちらが良いと申しましたが、主人がどうしてもこちらにと、主人の……古巣でもございまして……」
それで、ははん、なるほど、爺さん、OBかい。と割合に合点がいった。さすが先輩、話ができるぜ。
ゼミ中は残天が頭中をかけめぐり、終わってから、和光に行った。