殺シ屋鬼司令II

世界一物騒な題名の育児ブログです。読書と研究について書いてきました。このあいだまで万年筆で書く快感にひたっていました。当ブログでは、Amazonアフィリエイトに参加してリンクを貼っています。

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RNAiはエンドサイトーシスによって生じる

  • The endocytic pathway mediates cell entry of dsRNA to induce RNAi silencing.
    • Saleh et al. Nature Cell Biology 8, 793 - 802 (2006)

今回のNCBのArticleである。
最近Profタイラー絡みで一般にも有名になったRNAだが(そして、そんなものを吹き飛ばすほどもっと豊穣な結果がRNA研究では得られているのだが)、近年(基礎応用の別なく)発展の目覚しいものとしてRNAi < RNA interference(干渉)というものがある。詳しい説明は省くけれども、RNAという生体高分子を用いて遺伝子を比較的ラクに人工的にコントロールすることができるというとってもありがたい手法である。
このありがたい手法、もともと「なんか変な現象が起きている」というのでRNAを培養液に混ぜ込んでみたりぶちこんでみたりしたら遺伝子をコントロールできた、という、考えてみればいい加減なものであった。どういう酵素が働いているかはものすごい勢いで研究されて、大体わかってきた。ただ、細胞の中でRNAがコントロールに一役買うというのと、RNAが活躍するために細胞の中に取り込まれるというのは別の次元の話である。後者はあまりわかっていなかった(らしい)。
ここで今回の論文が登場する。RNAの長さを変えて、コントロールのきき具合を調べていた。直接細胞の中にRNAをぶちこんだときは、きき具合は変わらなかった。しかし、培養液にRNAを混ぜ込んだ(間接的な)場合は、RNAが長いほどよく効いた。これは何か変だ、と、研究を進めると、RNAの取り込みはどうやらエンドサイトーシスによって生じているらしいとわかった。この経路は、自然免疫の働きとよく似ているから、RNAiが起きる背景には、ひょっとすると細胞がウイルスに対して取ってきた防御手段としてのRNAによる遺伝子制御機能があるのではないか……
ざっとこういうのが今回の論文の内容であった。RNAiというのは分子生物学的なメカニズムはわかってきているものの、もっと細胞生物学的な、細胞の内外という観点でのメカニズムで、なるほど、と思った論文である。また、最後に述べてあった自然免疫との関連も、面白かった。