殺シ屋鬼司令II

読書と研究について書いてきました。最近は万年筆で書く快感にひたっています。当ブログでは、Amazonアフィリエイトに参加してリンクを貼っています。

居酒屋でバーで語る、性の進化についてのかんたんな夜の講義

「ハマヂくんっていま何やってるの?」
「藻」
「モ??」
「藻類、原始的な植物。えーと、ボルボックス、……植物プランクトンみたいなもの……わかる?」
「うーん、へーぇ、何となく」
「……の、……性、セックスの進化」
「すっっっごい細かい!」
精子卵子って知っとるやろ? 藻にもあるんさ」
「うそー! 藻にも精子卵子があるの?!」
「あるよお! 植物におしべとめしべがあったりするみたいに、藻にもオスとメスがあるんやで」
「へえええ。で、その、」
「進化」
「っていうと……」
精子卵子っていうけど、生物学では、受精をする細胞のうち、大きいのが卵子で、小さいのが精子。それで、精子をつくるのがオス、卵子をつくるのがメスって決められてる、定義されてる」
「えーそうなん?! そんな決めかたなんや!」
「そうそう。で、精子卵子っていうのがいまあるわけやけど、最初は、というか原始的な性はな、おんなじ大きさやった。せやから、いまの感覚でいえば、卵子同士がくっついて受精する、みたいな、な? でも、ある時点から、だんだん、片っぽがちいさくなっていった」
「えーなんで?」
「小さい方が、燃費がええワケさ。クルマもそうやろ(知らんけど)? で、燃費がいいと」
「あ、それで、いっぱい精子つくって、競争させて、優れたものがはやく着くんやね」
「あーそれもあるな、早いのは正常な機能がそんだけそなわっとるわけやから、遺伝子も正常やとかんがえるのはあんまり間違ってない。あとは、やっぱり、近親ソーカンするとけっこうヤバいやんか、やっぱヤバいから、遠くに行きたがる、そういうんもあるから燃費よくしたいわけ。
で、俺の研究いうんは、これがどんなふうにして精子が小さくなってったかをあきらかにすること。燃費いいほうがいいっていうのは確か(と思われつつある状況)なんやけど、その燃費の向上がさ、どうやって達成できたかっていう話は、別やんか。やっぱり技術革新ってあったんさ。技術革新があって燃費の向上があるから、その具体的な技術革新のやり方を調べるというのが俺の研究スタイル。でも俺が実際にやっとるのはもっともっと細かいところ」
「どんなん?」
精子卵子っていうスタイルでセックスする藻がいる一方で、いっぽうでは、まだオスとメスがはっきり分かれてない藻もおる。そしたら、そいつらのゲノムを比較したら、技術革新がわかるやろうって思うわ。いちばんの心臓部になるんは、オスを決める遺伝子っていうかな。それがあったらオスになるちゅう遺伝子が、あるわけ。それを探して、見つけて、調べた」
「その研究はどうなるの?」
やれやれ。
「……ええと、そうな、俺もその問いはいつも考えとるんさ。
で、答えはまだ出てない。
何かの役に立つやろうとは思っとるけど。生物学っていう括りの中では大きいインパクトがあるのは間違いない。せやけど、それが金になるかっていうのは、ちょっといまはまだ見えてこんのさ。」