ちょっと前に「生気論の歴史と理論」という本が訳出されました。
- 作者: ハンスドリーシュ,Hans Driesch,米本昌平
- 出版社/メーカー: 書籍工房早山
- 発売日: 2007/01
- メディア: 単行本
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いちばん気になるのは、訳者が巻末の解説で展開する「現代の(分子)生物学は目的論を排除したかに見えるが、実は目的論を密輸しているのである」という命題です(ただ、この言葉では書いてありません)。
この論文で、訳者たる米本氏自身の主張は、一切の矛盾なく否定されうるもので、ここでは紹介しません。しかし、上の命題だけは残っています。なぜか。
なぜだろうと私は前に、早春の午後を費やして考えました。進化論における5箇条のアルゴリズムを精査し、非ユークリッド幾何学の発見よろしく、抜け穴らしきものがないかを吟味しました。
私は以下の5条件で進化を考えることを好む者です。
- 起源:ある起源が存在する
- 遺伝:形質を決定する(遺伝的な)担体がある
- 突然変異:突然変異が生じて形質に差異が生まれる
- 選択:形質の差異に従って選択される
- 蓄積:突然変異は長い時間の中で蓄積されうる
目的論密輸のための抜け穴は、まさに自然選択説の根幹であるべき「選択」の条項以外に考えられません。
私もまだうまく答えられません。差異とそのコインの表裏にある選択との間には、自然における価値判断があります。まさにそれが生殖と絶滅との間にありませんか。そこで厳密に線引きされていませんか。
ちなみに、意味の世界が構造であるとすれば、記号と同様に、個々の意味は存在せず、唯一の意味からそのネットワーク構造の位置として表現されるわけで、そこから唯一の意味という概念が出てくる。ラカンの発想はこのあたりに依存しているはず。
finalventの日記「ソーシュールが近代言語学の父である理由」
http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20070429/1177819494
「生存」こそが唯一の意味で、生存だけを根幹に据えた目的論であるということではないですか。
これが、私が最近考えていたトンデモ話です。具体的でもなければ目新しくもないものです。極度に抽象的です。そしてマクロな実際の現象を考慮に入れていません。