殺シ屋鬼司令II

読書と研究について書いてきました。最近は万年筆で書く快感にひたっています。当ブログでは、Amazonアフィリエイトに参加してリンクを貼っています。

甲虫を殺す

(July 8. 2005)

いま一匹の甲虫が部屋の中に飛んでいた。突然スイッチが切り替わった。甲虫は鈍重かと見える通り、緩慢ながらさすがになかなかパワーのある飛行を決める。
わたしは跳びあがり、天井近くに飛び上がっている甲虫をティシューペーパーで取った。くるんでしばらく持っていた。つぶすのも気分がよくない。逃がす道義はない。絶対殺す。持っているうちに逃れ出て、飛び立ち、あろうことかわたしの額に止まった。スイッチがさらに切り替わった。
水責め。
ふたたび甲虫を捕らえ、くるんだ。
洗面所に行き、甲虫をくるんだまま洗面台に水を張って浸け、窒息死させよう。
しかしなかなかしぶとい。なんどもなんども泳ぎまわろうとする。そのたびに、ボショビショに濡れたティシューペーパーで包み込み、沈める。
ティシューでつかんだ状態で水中でひっくり返してみると、甲の間に気泡を抱いている。なるほど、これが生命線か。そのまま揉んで、どうにか気体をはずそうとした。
揉むが、なかなか気体は体節を離れようとしない。
そのうちに気が変わった。よりすばやいterminationを、と考えた。
いったん洗面所を離れ、ボイラーのスイッチを入れた。甲虫は濡れティシューのなかにくるんだままである。
湯を出して洗面台に湯を張りなおす。水を混ぜないので少し熱い。ティシューごと包みを浮かべた。ほどけたティシューから甲虫が出てきた。勢いよく湯が流れ落ちる滝壺に甲虫の体が吸い寄せられていって、もがいている甲虫は熱い液体のなかに深く押さえ込まれる。
二三回そうしているうちすぐにじたばたしなくなり、30秒も経てば翅をすべて開くにまかせていた。死んだのか、ともかく動かない。水の中でタダ翻弄されるだけである。
ぬれているのでゴミ袋に捨てたくなかったので、水面に浮かんでいる死骸を指先で取り上げ、となりにある便器に弾いた。指は洗面台になみなみとたまった湯でじゃぶじゃぶやった。シャワーとして浴びるにはちょっと熱いぐらいかな、という湯だった。
バーを大の側に回した。
しばらく水がタンクにたまる音が聞こえていたがもう聞こえない。