博士号の要件を考えるために:『博士号への道』抜き書き

(補足)
博士号への道―海外で学位をとるために』は、『博士号のとり方 学生と指導教官のための実践ハンドブック』(の原書)を抜粋し、体験談を添えたものであるようだ。
つまり、『博士号のとり方』がオリジナルということ。
(2019/06/05追記)
さらに新版邦訳がでている。

博士号のとり方[第6版]―学生と指導教員のための実践ハンドブック―

博士号のとり方[第6版]―学生と指導教員のための実践ハンドブック―

博士号への道―海外で学位をとるためには、修士課程に入った頃に読んだ。
博士号取得のための研究はVery tiny originality, very tiny contributionがあればよい、というのが本書の一つのキーワードである。そのために諦めずに研究を続けることが博士号への道である。博士号取得のために十分とされる「小さい独創性と貢献」だけでも非常に大変なのだから、博士課程においてはあまり大それた事は考えず、博士号取得後にさらなる高い領域を目指すべし、ということである。

抜き書き

PhD課程に対する心構え

PhD課程の教育においては、学生は真に「自分から主体的に学ぶ」ことを要求され、「一人の独立した研究者」たることを要求されます。そして学生は「自分自身の管理の下で」、プロの研究者としての研究能力を向上させていくことが要求される p.2

PhD課程においては、自らの学習の進め方に始まり、PhDの学位を取得するためのすべてのことについて、あなた自身が責任を負っているという自覚を強く持っていなければなりません。 p.3

Very tiny originality, very tiny contribution

これらのoriginalityやcontributionはvery tinyな(ほんのちっぽけな)ものであってよい、いや、very tinyなものでなければならない p.6

博士号とは何か

博士の概念は、その分野の知識を現在の知識の限界まで駆使できる能力があり、しかもその限界を超える能力があるということ p.64

あなたが概論を書いているのは、そうすることで、あなたがプロの研究者として成熟し、十分にその分野の題材を把握したうえで、それを駆使する方法を習得したことを証明している p.66

プロの研究者が獲得していなければならない重要かつ究極の能力とは、自分自身の(または他人の)研究を現在の研究の発展に照らして評価し、また再評価しうる能力 p.66

プロの基準の何たるかを知らないうちは、PhDの学位を取得できない p.67

アカデミアというのはギルドであることがよく分かる。

博士論文の審査官をどう捉えるか

審査官があなたに与えるものは、原則として、「他の人々のPhD論文を審査する地位」でもある p.67

あなたをその分野の権威として、他人のPhD論文を審査しうる水準まで引き上げること p.67

……意外かつ最も重要なことに、審査官の目的は、PhD論文を学問的に厳正に審査した上で、その研究を落とすことではなく、その研究を「通すこと」にあるということです。p.71

PhD課程の十戒より

PhD候補生が最も陥りやすい失敗は、中退です。最後までやって失敗する人は、実際にはほとんどいません。 p.72

学位論文には明確な立場からの主張が貫かれていなければならず、それを検証するための仮説を立て、その仮説について一貫性と客観性をもって検証していくことにより、導かれた結論に説得力が付与されるのです。 p.87

PhDの学位を取るための研究作業は、本質的には研究者としての訓練課程であって、「独創的な貢献」という言葉は必然的に、きわめて狭い意味に解釈されるべき p.81

PhD課程における研究作業を、その研究領域における定説を根本から揺るがすようなブレークスルーを起こすことというように考えている学生には、逆に期待はずれになるかもしれない p.81

PhD課程における研究は、……「既存のパラダイムを精緻化するのに役立ち、まだ不十分にしか説明されていない、困難かつ当惑させるような事象を取り出す」こと p.81

研究は、新しいデータや既存のデータの新解釈から導き出される議論や推論を組織的に進める上で首尾一貫している必要があり、PhD論文では、その研究に肉付けするためのデータを整理し、その説得力を向上させる議論に焦点を当てることが必要である p.87

余暇を有意義に過ごすためのお金も出し惜しみしない p.94

博士論文に要求されるcontribution貢献度とoriginality独創性

さらにわかりやすく言えば、「貢献度」とは、

「あなたの研究の結果として、あなたが用いた『背景となる理論』と『焦点となる理論』が、なぜ、どのようにこの研究を行う前と異なることになったのかについての議論」

p.108

「独創性ある研究成果」とは?

  1. 新しい情報の主要な要素を、初めて文章の形で示した。
  2. すでに行われた独創的な研究を継承している。
  3. 指導教授の立案した独創的な研究を実行に移している。
  4. 独創性はみられないが優秀な研究に関して、技術・観察・結果のいずれかの点において、ひとつの独創的な要素を与える。
  5. 多くの独創的な考え方、方法、解釈があること。ただし、それらはすべて、その大学院生の指示のもとであれば、他の者が実施したものでもよい。
  6. 他の研究者の考え方の検証の中で独創性を示している。
  7. これまでになされなかった実証研究を実施した。
  8. これまでにない総合を行った。
  9. すでに知られている題材を用いているが、新しい解釈を加えている。
  10. 他の国々では行われていたが、自国においては初めて何かを厳密に検討した。
  11. 特定の技術を採用し、それを新しい領域に応用した。
  12. 古くから存在している問題に新しい証拠を提示した。
  13. 隣接諸科学にまたがる研究であり、これまでとは異なった方法論を用いている。
  14. その分野の人々がそれまで注目しなかった領域に着目している。
  15. それまでにない方法で知見を加えている。

p.111

(追記)この独創性を全て満たすのでも、いくつか満たすのでもなく、たったひとつだけ満たせばそれは独創的なのだという重要なことを書き落としていた。