円環の悪魔

インバーPCRを試みている。
昨年春に試みて、うまくいかなかった。制限酵素のラベルを確認してみると、消費期限が99年となっていた。ビンテージモノ、と嘯いている場合ではない。その時は、TAIL-PCRに乗り換えて、うまく行った。
と思っていただけだった。
確認してみると私は小暗き森の中をさまよっているにすぎなかった。いや、どこを歩いているのかも定かではない、異次元を引き摺り回されているのに等しかった。二回目のTAILで、既に繰返し配列の沼に足を踏み入れていたのである。道行を急いで確認を怠ったのだ。実に愚かだった。
プロトコールをまとめ、改善された方にお話しを伺う機会があったけれど、そのときも、確認した配列が全てですよー、と飄々と仰った。確認が全てだ。
あと残っている手はわずかしかない。インバーPCRは最大の候補である。しかし、かつて失敗した経験が、そっと囁く。

大丈夫?

追い詰められるといけない。一度失敗してダメだと思ってしまう。以前うまくいったときだって、決してすんなり行ったわけではなかった。何回も試みていた。実験ノートが有難い。
しかも、確認すると、新しい酵素が入っている。聞くと、卒業した先輩が科研費の消化のために買っておいてくださったのだという。
加藤さんありがとうございます。