殺シ屋鬼司令II

世界一物騒な題名の育児ブログです。読書と研究について書いてきました。このあいだまで万年筆で書く快感にひたっていました。当ブログでは、Amazonアフィリエイトに参加してリンクを貼っています。

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大著

博士論文は大著というイメージがある。先行する研究を余すことなく咀嚼し消化し、自らの研究活動をそこに位置付け、自分自身の意義を理由とともに主張する。
林尹夫『わがいのち月明に燃ゆ (ちくま文庫)』という戦死した戦中の学生の日記にも、大著を書かねばならない、という述懐が残っている。彼が戦争を生き残っていたとして大成し得たかはわからない。しかし彼は不安もありながら自らの知性を信じていたはずであり、私は読者としてその姿勢に奮起する。
大著といえばダーウィンのThe Big Species Book「種の大著」と呼ばれている草稿がある。『種の起源』が「要約」として公刊されたときに予告されていた「本論」だが、結果として出版されないまま著者は世を去った。現在、研究者らによって編集作業が進んでいるということである。