大著

博士論文は大著というイメージがある。先行する研究を余すことなく咀嚼し消化し、自らの研究活動をそこに位置付け、自分自身の意義を理由とともに主張する。
林尹夫『わがいのち月明に燃ゆ (ちくま文庫)』という戦死した戦中の学生の日記にも、大著を書かねばならない、という述懐が残っている。彼が戦争を生き残っていたとして大成し得たかはわからない。しかし彼は不安もありながら自らの知性を信じていたはずであり、私は読者としてその姿勢に奮起する。
大著といえばダーウィンのThe Big Species Book「種の大著」と呼ばれている草稿がある。『種の起源』が「要約」として公刊されたときに予告されていた「本論」だが、結果として出版されないまま著者は世を去った。現在、研究者らによって編集作業が進んでいるということである。