生物学者としてこういう問題はつねにつきつけられる。
面白いことだけをおいかけろ、という主張で影響力のつよいひとの代表は、利根川進博士だ。
精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか (文春文庫)
- 作者: 立花隆,利根川進
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1993/10/01
- メディア: 文庫
- 購入: 10人 クリック: 103回
- この商品を含むブログ (45件) を見る
一方で、ある意味古風なスタンスが、ひとつの生物でさえ未知は膨大なのでもあり(ということかどうかはともかく)、「生物学者は一生涯をひとつの生物に捧げるに若くはない」というものである。
- 作者: 白上謙一
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1972
- メディア: ?
- この商品を含むブログ (1件) を見る
しかしまさにそういうスタンスを感じる研究者がいま話題になっている。
孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)
- 作者: 前野ウルド浩太郎
- 出版社/メーカー: 東海大学出版会
- 発売日: 2012/11/01
- メディア: 単行本
- 購入: 31人 クリック: 976回
- この商品を含むブログ (28件) を見る
ブログも人気だ。
http://d.hatena.ne.jp/otokomaeno
サバクトビバッタの「相変異」メカニズムは、農作物への被害を防ぐ観点から重要であるばかりか、生物学的にも大変興味深い。
バッタ博士は、先月末のニコニコ超会議でも強烈なインパクトを放っていた。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv133705212#5:36:42
プレゼンの面白さや、フィールドのロマンを放っているだけではなく、上記の孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)を読むと、非常にタフな実験室での生理学者ということがわかる。
ひとつの生物をいろいろな側面から実験室で調べ尽くし、さらにフィールドへと赴く。
その生物に生涯を捧げるのは、その現象が面白いということも決定的に重要だろう。しかし、それ以上のコミットメントであるようにも思う。
バッタ博士は、第一に、このバッタへの愛みたいだ。