面白いことだけ追いかけるか、生物と添い遂げるか

生物学者としてこういう問題はつねにつきつけられる。
面白いことだけをおいかけろ、という主張で影響力のつよいひとの代表は、利根川進博士だ。

この本のなかでそう発言しているのみならず、ご自身も免疫学での重要な発見のキャリアから一転、神経科学にうつった。
一方で、ある意味古風なスタンスが、ひとつの生物でさえ未知は膨大なのでもあり(ということかどうかはともかく)、「生物学者は一生涯をひとつの生物に捧げるに若くはない」というものである。この本を眺めている時にそういう主張を目にし、高邁な姿勢と思った。
しかしまさにそういうスタンスを感じる研究者がいま話題になっている。
孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)

孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)

前野ウルド浩太郎博士は自他共に称する「バッタ博士」としてアフリカ・モーリタニア国立サバクトビバッタ研究所で研究をされている。
ブログも人気だ。
http://d.hatena.ne.jp/otokomaeno
サバクトビバッタの「相変異」メカニズムは、農作物への被害を防ぐ観点から重要であるばかりか、生物学的にも大変興味深い。
バッタ博士は、先月末のニコニコ超会議でも強烈なインパクトを放っていた。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv133705212#5:36:42
プレゼンの面白さや、フィールドのロマンを放っているだけではなく、上記の孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)を読むと、非常にタフな実験室での生理学者ということがわかる。
ひとつの生物をいろいろな側面から実験室で調べ尽くし、さらにフィールドへと赴く。
その生物に生涯を捧げるのは、その現象が面白いということも決定的に重要だろう。しかし、それ以上のコミットメントであるようにも思う。
バッタ博士は、第一に、このバッタへの愛みたいだ。