殺シ屋鬼司令II

世界一物騒な題名の育児ブログです。読書と研究について書いてきました。このあいだまで万年筆で書く快感にひたっていました。当ブログでは、Amazonアフィリエイトに参加してリンクを貼っています。

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#シャドーイング のススメ

この本が2019/2/14までKindle版がセールで半額になっていることを知ったので、ぜひ紹介したいと思ってこのブログを書いた。
いや、うちのかみさんがね、シャドーイングを実践して英語での会話が上達したんですよ。……コロンボみたいな書き出しになってしまった。
彼女も、最初はうまくコツが掴めなかったようだった。
録音されている教材の発話文を追唱するときに、意味を取りながら発音することができない、というのが、はじめのころのハードルだったように記憶している。
私はその「意味を取れない」という話を聞いたとき、なにかピントがズレているな、と思った。うまくは言えないのだが、それはこのトレーニングで目指すものではないのではないか、と。
私も彼女の助けになることがないだろうかと、本屋を覗いてみた。そして一冊の本……というか、一人の著者がシャドーイングについて教育上の効果測定をして実証することを試みているのを知った。
この著者は後に新書を出していて内容がコンパクトにまとめられていた。それが冒頭に上げた本である。
この本はとてもいい本で、シャドーイングが認知の訓練になることを分解して説明していた。この本を読むことでどういう意味でシャドーイングを行うのかを理解することができる。単なる苦行ではなくて、一つ一つの行為の意味をはっきりと自覚することができる。
第4章「シャドーイングによるアウトプット産出への効果」で、「復唱する」という行為を四段階に分けて説明している(pp.107-8)。

  1. オウム・九官鳥のものまねに相似な「音響レベル」の復唱
  2. 単語の意味はわからないが発音の構成単位である「音素」としてはかろうじて認識できている「音韻レベル」の復唱
  3. 複数の音素が何かの語を構成していることを認識している「語彙レベル」の復唱
  4. 語彙からその文章の意味まではっきり理解した上で復唱する「意味レベル」の復唱

そしてさらにシャドーイングレーニングを進めることで学習がどのように達成されていくかが順を追って説明されている。

シャドーイングの学習の最初の段階では、意味もわからないまま音声をひたすら復唱するという、上記(1)(2)で示した音響・音韻レベルの復唱になりがちです。しかし、その学習に時間をかけて徐々に音声復唱することに慣れてくると、少しずつ復唱の自動化が進み、シャドーイングがだんだんと楽にできるようになります。そうすると、復唱と同時に、聞いた音声の意味も楽しみながら、シャドーイングを実行することが可能になってきます(つまり、(3)(4)の単語・意味レベルに移行します)。 (p.108)

私はこの箇所が、かみさんの当初のつまづきに対応すると思った。いまはつまづくとも、音響・音韻レベルの復唱で基礎固めをすることが、語彙・意味レベルでの熟達への近道であるという説明だ。だから、彼女にこの本を読んでもらった。そして彼女は実践し始めた。
彼女は最初、英単語・熟語ダイアローグ 1800 三訂版のものを0.5-0.8倍速再生してシャドーイングを行っていた。その後、彼女はTOEICの公式問題集に移り、そのリスニング問題をシャドーイングするようになった。2ヶ月ほど経過して、彼女は自分が1倍速でもシャドーイングができることに気がついたらしい。やはり効果はあるのだと思った。

ひとつ注意しないといけないのは、新書版ではあるが意外に専門用語をポンポン入れて書いてある。イメージすることが難しいことはあるかもしれない。
Amazonのレビューを見ると「シャドウイングのやり方についての詳細が知りたかった」と書いているひとがいる。しかし、読んで見れば第6章で経験の浅い段階から熟達の過程を説明してある。ほんとうに読んだのか疑問になった。
確かに、中に教材が入っているわけではないという意味では実践の本でないということもできるかもしれないが、自分に合った教材を探すのもまた重要な学習のいち場面だろう。著者はこういった実践教材も出しているようだ。

決定版 英語シャドーイング【改訂新版】

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