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21世紀に読書している人なら常識になっている、進化生物学やゲーム理論、脳科学の主要アイデアをまとめている。
知識のビッグバン以前以後
副題に「最前線」とあるけれど、むしろベースキャンプとよぶほうがただしいだろう。
つまり大学の教養課程で共有されている視点だ。
わたしが20年前に大学の教養課程でうけた講義、「適応行動論」「計量社会科学」「認知神経科学」では、すでに共有されていた。これらの講義は東京大学駒場キャンパスにいくつかある大講義室を埋め尽くしていた。つまり、当時大学に入学した学生のかなりの割合が受講していたから、その当時の在学生には相当共有されていたといえる。
そうした講義で扱われていた進化生物学やゲーム理論といった、それまでの知識のありかたを転換させるようなアイデア群が、20世紀後半に確立し、21世紀に入って一般にも広まったことを、この読書案内ではあつかっている。
橘はこの状況を「ビッグバン」になぞらえる。
この〝ビッグバン〟の原動力になっているのが、複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学などのそれこそ爆発的な進歩だ。
これさえわかれば、知の最先端に効率的に到達する戦略はかんたんだ。
書物を「ビッグバン以前」と「ビッグバン以後」に分類し、ビッグバン以前の本は読書リストから(とりあえず) 除外する──これを「知のパラダイム転換」と呼ぶならば、古いパラダイムで書かれた本をがんばって読んでも費用対効果に見合わないのだ。そして最新の「知の見取図」を手に入れたら、古典も含め、自分の興味のある分野を読み進めていけばいい。
つまり、そのことをその結果、それまでに支配的だったアイデアの多くが無効になった……それが表題の「読まなくてもいい本」という事です。
それがどうしてこの時期に一気に花開いたのかは個人的には興味がある。
おそらくは、20世紀に交通や通信のインフラが加速的に整備されたことなのだろうけれど。