殺シ屋鬼司令II

世界一物騒な題名の育児ブログです。読書と研究について書いてきました。このあいだまで万年筆で書く快感にひたっていました。当ブログでは、Amazonアフィリエイトに参加してリンクを貼っています。

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なぜわたしは自重トレーニングを続けるのか

アスリートからの率直な質問

thinkeroid.hateblo.jp
この記事を公開したあと、質問をもらった。

柿添(暇なおじさん3.0)は、競泳とフィンスイミングの選手だ。わたしと同い年だが*1、いまなお自己ベストの更新を目指すアスリートで、実際にマスターズ35歳区分200mバタフライ世界新記録も出している。

それも30歳を過ぎ、また競技専業(というのかどうかはわからないが)ではなく、会社員としてビジネスをやりながら競技もするという立場で活動をしている。方法論におけるコスト(特に時間)・パフォーマンスについては鋭い意識を持っている。

本人が、為末大氏と対談して語っているYouTube動画もある。

だから彼のスタンスからすれば

シャバにいてジムも行けるのに、自重でチンタラしてるのはなんで?

というのは当然の疑問になる。

わたしはそのときは

と答えた。

後半のジム代をケチってるからというのはそのままなんだけど、前半部分はあまりじゅうぶん説明できている気がしない。

あと、あらためて考えてみると、漸進性過負荷の原則を自重でどう実現するか、というのは、『プリズナー・トレーニング』の眼目であるステップ構成でもある。以前のわたしは公文式、と呼んだ。

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ただ、器具を使ったほうが過負荷を漸進的に実現するのをたすけるというのは確かだと思う。つまり、ひとつの種目でも、『プリズナー・トレーニング』では種目ごとにかなり違う姿勢が要求される。そもそもスクワットはステップ1では肩を地面について倒立するところからやる。でも、器具を使うなら、この点はもっと容易に実現できる、という問題意識はある。

自重トレと哺乳類・霊長類・ヒトの進化

やっぱりひとことでいうと、(最小限の器具を用いた)自重トレをはじめて、シンプルにおもしろいとおもったわけですね。

5年前にわたしはベアフットランニングでマラソンを2回完走したときに、ホモ・サピエンスの解剖学的形質と運動は重要な関連があるということを学んだ。

ハーバード大のダニエル・リーバーマンは、Youtubeに裸足でキャンパス内を走り回る奇矯な教授として上がっている。


www.youtube.com


もともと哺乳類の比較解剖学の教科書を書いていたのが、突如ランニングの研究をNature誌等に掲載して激しい議論を巻き起こした(利益相反項目ではベアフットランニングシューズのスタンダードでもあるビブラム社との関連を明記している)。

自重トレは、進化生物学の観点から筋肉をうごかすということを理解するたすけになった。ただ、哺乳類の解剖学は専門外なのでいまもまだいいかげんな理解のままだが、あらためて勉強したいと思っている。

上腕三頭筋を使う腕立て伏せは、明らかに四足歩行する哺乳類の運動につながっているし、上腕二頭筋を使うプルアップは、きっと霊長類(サル目)の樹上生活の残響だろう。

人類は両手両足をついて野を駆けることもなければ、木に登ることを常態とする生活もしていないから、その変容はいうまでもない。

それでも、腕立て伏せをしてみれば、野生で大地に立つ哺乳類の感覚を強く感じるし、プルアップで樹上生活を幻視するのはかんたんだと思う。

そういうわけで、人体がたどってきた来歴におもいを馳せるのがたのしいから、自重をやっている。

わたしの目的はといえば、動物であること、ヒトであることと向き合い、実感するためにやっている。

これはジムっていう経済活動を利用したり運営したりすることと、目指すところがかなり違う。

そして、ケチもある。必要な器具といえば、バスケットボール・テニスボール。あとは身近にある物品でいろいろできる。住宅地であれば公園があり、公園には鉄棒があったり、ぶらさがり健康器があったりして、どうにか目的が果たせる。

(ここから追記)

だいじな合いの手が入った。書きそびれて公開してしまったので追記する。

ボディメイク・筋肉それ自体を目指すとボディビルになるし、筋トレで(水泳や野球など他の一般の)競技のパフォーマンスを底上げしたい(自己ベストを更新したい・世界新記録を樹立したい)というアスリートが目指すところは異なってある。

わたしも筋肉をつけたいというのは当然ある。だけど、その目指しているのが、ヒトが野生で生きるのに使っていた身体ということになる。ヒトのデフォルトともいえるか。

そのためには持続的な成長を目指すことになるので、最速で筋肉をつけるよりも、これからながく筋肉を動かしていく必要がある。

自重で十分とはいわないけど、とりあえず動きを試しながら自重でやってみるというのが自分にとってしっくりきたということですね。

(ここまで追記)

だいたいこういうところでわたしは自重トレを続けている。

*1:われわれは高校1年の同級生である。