2017年初頭の「次世代シーケンサー」

私はいわゆるNGS・次世代シーケンサー*1の「現場」の人間ではなく、技術の進展の速いこの領域で現在の個別の正確な数字・名前・文献を挙げるのに適当な人間ではないけれども、いち利用者としての生物学者で、おおづかみな印象を共有するのも無益ではないのかもしれない、と思い、公開したい。

テクノロ リード 原理 検出 用途 評価
454 中程度 エマルジョン 塩基重合を光学検出 ゲノム おつかれさまでした
イオントレント 中程度 エマルジョン 塩基重合を電気検出 ゲノム おつかれさまでした
イルミナ ショートリード フローセル 塩基重合を光学検出 トランスクリプトーム・エピゲノム等 正確。現役で安定
PacBio ロングリード 一分子 塩基重合を光学検出 ゲノム 現状メインだけど数ヶ月でNanoporeに押されるのかな
Oxford Nanopore (商品名MinION) ロングリード 一分子 孔を通過するDNA高分子の各塩基を電気検出 ゲノム 現在エラーが多いが今後主流になる本命
  • NGSテクノロジーはリードの長さで三種類にわかれる。
  • このうち中程度は最近全く聞かない。短い間でしたがおつかれさまでした。中程度エマルジョンシーケンサーは、デノボゲノム配列決定という目的上は完全に一分子ロングリードに奪われたうえ、エマルジョン操作ってのが相当めんどくさかったらしい。
  • NanoporeテクノロジーのMinIONは新登場の機種なので、精度が急向上すると見られている。ロングリードのナノポアが向上する見込みは、その前のロングリードであるPacbioでそうだったから。
  • イルミナはそういう点では安定してるといえるのだろう。圧倒的な正確性と、一回あたりのリード数で他の追随を完全に許さない。だからトランスクリプトームやエピジェネティクスみたいな一塩基レベルの動態を相当良く見るのに適していて、その応用範囲はまだ尽きそうにない。
  • だから、デノボゲノムはロングリードか、ロングリードににイルミナのリードを上から塗って修正するみたいなことがやられてる。
  • 454・イオントレント・イルミナ・PacBioは原理的にはポリメラーゼが塩基を相補的に重合する時の反応を光学(イオントレントだけ電気)で検出する。正直ナノポアは、元のDNAの個別塩基自体を検出するから、ポリメラーゼを使うpacbioとさえ原理的に違ってる。次にどんなテクノロジーが来るのかすら見当がつかない。

ひとことで素人目の感想を書くと、これからは

静的な全ゲノムならナノポア、発現解析やエピジェネティクス・多様性含む動態はイルミナ

となる可能性が高そうだというおおづかみな印象を持っている。

*1:正しくは「超並列配列解読テクノロジー」Massively Parallel Sequencing Technologyとすべきだと思うが、慣例に倣う。