殺シ屋鬼司令II

世界一物騒な題名の育児ブログです。読書と研究について書いてきました。このあいだまで万年筆で書く快感にひたっていました。当ブログでは、Amazonアフィリエイトに参加してリンクを貼っています。

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アリ対策

キッチンのアリが再発して困っている。住み始めて1ヶ月ぐらいでキッチン・ダイニングにアリが侵入したことで対策をした。2月の末のことだったらしい。殺アリ剤のTERROという、プラスチックの容器に入った液体である。アリが群がるので甘いのだろうと思う。有効成分はBoraxというからホウ砂である。ワーカーが巣に持ち帰り、消化系を阻害するという。

置いてからしばらく、5月くらいまでは落ち着いていたのだがそこからアリが無視できないぐらいキッチンの上をうろつきまわるようになってしまった。あとから気がついたのだが、メーカーサイトにも3ヶ月で交換しろと書いてある。置いてからの有効期限が切れたということだ。備蓄してあったTERROを再度レンジの裏に置いた。そうしたら大量のアリが翌朝群がっていた。

アリがTERROに群がるさまを見て、「コンテンツがタチの悪い消費者に見つかる」という言い方のことを思い出した。ほそぼそと、声低くではあるが良い質のコンテンツがひっそりと世に出て、それがごく一部の消費者を得て楽しまれていたのが、何かのきっかけで大々的に注目を集め、結果としてタチの悪い消費者たちの目に止まってしまうということだ。本来そのコンテンツが向けられていない消費者であるうえに、文句だけは一丁前に言うためにクリエイターも元々のターゲット消費者も疲弊することで誰も得しないという現象である。

アリは行き来して歩くときにフェロモンをつけていくという説を認識している。最新の研究でどうなっているか私は知らない(メールフォームからタレコミお待ちしています)。フェロモンとは単に有性生殖だけのものではなく、運ぶというラテン語が由来の「フェロ」と物質を表す「モン」からなる。inferとかconferとかのferにもあるように、ferには何かをどこかからどこかへ連れて行くという含みを纏う。漢字の部首のようなものである。つまり、異性を自分に対して誘引するのもフェロモンなら、アリが仲間を自分の痕跡に対して誘き寄せるのもフェロモンである。そのアリの道程に点々とつけられたフェロモンは、アリが増えるに従って細い小川から大河のように鮮明さを増す。この自己強化がアリの行列の形成に至る。

アリの行列は、ひとつの「パターン」であるとみなすことが出来る。パターンを認識しているのはほかでもないヒトである。というより、「認識」という現象自体が「パターン」と不可分であるともいえる。パターンなくして認識なし、認識なくしてパターンなし。そして、この「認識=パターン」のペアがあることを「創発」というのだろうというように、この10年ぐらい思っている。そしてそれは、以前書いた、シュレーディンガーの『生命とは何か』の根幹部分でもあるだろうと思っている。

こういうパターンの形成には、コンポーネント同士がよりあわさり、くっつきあうような性質が必要だ。アリで言えばフェロモンである。コンテンツと消費者の関係であれば、いいねやリツイートがそれにあたるだろう。