殺シ屋鬼司令II

読書と研究について書いてきました。最近は万年筆で書く快感にひたっています。当ブログでは、Amazonアフィリエイトに参加してリンクを貼っています。

視界の較正

試験の前日など気分が昂ぶってしまったときおもむろに部屋の掃除を始めてしまったことがあるように、落ち着かないときは、つい自分の視野を固めて、確認しておこうとするのが私の常だ。
このあいだ、電気の消し忘れを咎められ、その主張は理にかなっているのだがあなたのその言い方が気に食わない、と思ったとき、相手の言葉の切れ目を縫って私の口をついて出てきたのは
「知ってますか、○○さん、電流っていうのは、+から−に流れるんですよ……DNAは、核酸だから、負に帯電しているから、+に流れるんですよ……」
という確認的知識だった。話の流れをまったく無視しているうえに、自明のことである。○○さんは呆気にとられて黙ってしまった。
あるいは、小学校に上がる直前、当時通っていた保育園で、新入園のための見学だったか、見知らぬ女の子が先生に引かれて歩いた。
今から考えるとばかばかしいことだが、いいところを見せられるように、(ここからが注目である)春秋の七草を諳んじることができるか、指を折って確認していた。だれにも言わず、ほかの子たちとは少し離れて、部屋の真ん中で、ひとりでぶつぶつと思い出していた。
七草がいったいなんのいいところになるのか今の私はまったく理解できない。そもそも七草の知識を披露するようなことなどなかったし、普通に考えてもあるはずがないと思う。だから、やはりあのときも、自分の視野に放り込まれたゆらぎを補正・較正するために、まず自分の知識のうち一番コンパクトなものを手にとって眺めてみたとしか思えない。
早く家に帰って少し眠ることにしよう。