殺シ屋鬼司令II

世界一物騒な題名の育児ブログです。読書と研究について書いてきました。このあいだまで万年筆で書く快感にひたっていました。当ブログでは、Amazonアフィリエイトに参加してリンクを貼っています。

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まじめなみじめな失敗談。規定度について

今回感じて、世の諸先輩方に申し上げたいことは、規定度という単位系を現在の大学生・院生が知らない可能性なのだ。
さっき実験で大ポカをやらかした。
食塩NaCl(105.2 g)と水酸化ナトリウムNaOH(60 g)を3リットルの水に溶かした溶液を作るはずが、NaOHの105.2gを水に入れてしまい、食塩を量っているうちに、気がついた。
逆やん、と。
その時点の水の量はアバウトで、2リットルに少したりないぐらいで攪拌していた。二種類の薬品がとけきったところで3リットルまで水量を増やすつもりだったのである。大量の高濃度アルカリ溶液をいったいどうしようかと途方にくれた。
先輩に相談した。
「じゃあ、必要量は使って、あとはイチキテイのNaOH水溶液をつくって」
イチキテイ…生物学実験ではよく使われる単位だ。"N"という文字で表される。1NのNaOH水溶液をつくれ、ということなのである。
どういう単位か。つまり、酸やら塩基やらというのは、分子を水に溶かしたときに、水素イオンH+/水酸化物イオンOH-を出すわけ。種類によって、一分子あたりのイオンの数が違う。NaOHであれば一個だけれども、二個のものやらなんやらがある、と(私の中に刷り込まれている知識はこの程度である)。
この「規定度」が私、感覚として身についていなかったのである。
目の前の先輩が当たり前のように言うこのタームを私がなぜ理解できなかったかというのは、それは高校課程の化学のカリキュラムの違いである。私の頃には、もうほとんど規定度というのは意識しなくても良かった。意識の高い人たちは意識していたのかもしれない。私は高校化学というのはけっこうアバウトに付き合ってきた。それでもセンターでは100点だったから、私の時代ではその程度の理解しか求められていなかったのだと思う。一方で、先輩方の年代には、当たり前のように規定度という用語が登場し、計算させられたのだろう。この違いはささやかだが、「単位」というものが日常的に使われるものである限り、大きな意味を持つ。
であるから、1NのNaOHを作って、と皆さんのうちの誰かが新米に頼んだとする、そして新米君が、ちょっとでも怪訝そうな顔をしたならば、「規定度、知ってる?」と聞いてあげてほしいのである。