機関リポジトリと私アンドソーオン!

機関リポジトリという機構の存在を知ったのは10年前だったと思う。大学図書館の機関紙に紹介されていた。
ウェブが全面化する中で図書館の意義も問われるなかで、知識産出制度である大学のアウトプットが高額の購読料を積まないとアクセス不可能であるということに対する1つの応答として、学内から投稿・公刊された論文を大学図書館が一括してオープンアクセス化していこうという取り組みだ。
で、10年が経ち、私も当事者となった。論文を機関リポジトリに登録する案内が来たのである。
京都大学のKURENAIというシステムで、それは先日PLOS ONEに公刊した論文の所属機関を京大にしてあったからである。
いよいよ自分も機関リポジトリに登録するのか、と思い、はたと気がついた。
PLOS ONEはもとよりオープンアクセスなのである。
リポジトリからの案内には、オープンアクセスであるから特段の交渉は雑誌編集部とは必要ないから簡単であるというように書かれている。

……Elsevier, Springer, Blackwellなど大手出版社を含む94%の学術雑誌は論文を機関のサーバから無料で公開することを認めています(このような出版社を Green Publisher,また,このような雑誌を Green Journal と呼んでいます)ので,その場合は改めて許諾を得ることなく登録することができます。ただし多くの場合、出版社がレイアウトした出版社版ファイルの登録は認めていないため(少数ですが,出版社版の登録を認めている出版社も存在します。例えば,PLOS ONEなど),著者の手元にある著者最終版ファイルを登録することになります。
京都大学学術情報リポジトリ 総合案内サイト−Kyoto University Research Information Repository

そのPLOS ONEだった。
しかし、では、なぜ置くのか。
せいぜい贔屓目に考えて、本家のPLOS ONEサイトがダウンした時のバックアップか。
そして1ヶ月が経過して、当のKURENAIから、6月ダウンロード数の集計が出た。5件。
えっ。そんなに。
というか、PLOS ONEは各論文のダウンロード数を集計しているんですよ。アクセスカウンターみたいなものである。
これはバラバラに成ってしまうなあー、と思った。少し違うが、「ブログエントリのポータルサイト転載」とも近いように思える。
それはともかく、このKURENAIを目にする度に、デス声を上げそうになるのが抑えがたい。
私自身は機関リポジトリという試みを応援したいのでもあるから、登録したことに関しては、オーケイであると思っている。
ただ、機関リポジトリと競合するサービスはいくつかあるのである。

  • 各種個人サイト(大学サーバ、Google sites、Researchmap、他)
  • ResearchGate
  • Mendeley

個人サイトの目的は別にあるから割り引いても、ResearchGateとMendeleyは明確に自らのサーバをリポジトリ化する意識がかなり強いわけである。
論文誌各社の購読料の高騰が各種の研究機関の財政を実際に圧迫している。これは生物学では非常に重大な問題であるけれど、数学・物理学分野のプレプリントサーバ(Arxivなど)も、その運営費を機関に対して負担せよという。そうした動きに抜け目なく出てきたのが上記のサービスであると考えるのが自然だと思う。
もう少し言えば、Mendeleyを文献管理ソフトとしてだけ見てしまうと大きな流れを取り損なう。Mendeleyに並べて考えないといけないのは、Endnote/Papers/Zotero(文献管理)でも、Evernote(情報ドキュメント・クラウド管理)でもなく、Faculty of 1000 (F1000)である。
つまり、もう単なるデータベースとか文献リスト出力は超えた所に、戦場が出現している

次に何を読むべきか

もう、単に情報を貯めるだけでは能がなくなってしまった。
1人の研究者として、産生される論文の山を全て把握するというのは実際不可能である。ナムアミダブツ!
膨大すぎる文献の津波をどう捌くかは既に現場の問題になっている。
そこにMendeleyがありF1000がある。

「これは、ユーザーの手元にあるデータを系統化してくれるソフトなんだ」。ランカスターはそう熱っぽく語る。「さらに、ユーザーのローカルデータや優先順位づけについてのフィードバックをしてくれて、そればかりか、ユーザーの書庫にある文献に基づいて驚くほど的を射た質問までしてくる。おまけに、研究者が気づいてすらいないような情報不足な箇所を認識し、クラウドソースを活用した引用でそれを埋めることまでしてくれるんだ。数多くの学術分野で、ぼくたち研究者が肝心要の質問を取り交わすやり方を、根底から変えてしまいかねないすごいやつだよ」
知のシェア – 学術論文における理論と実践(その1) from 『WIRED』VOL.2|WIRED.jp

こうした「推薦」の働きは色々なところから出てくる。Corresponding Authorだとメールアドレスを開示することになり、それはスパムが一杯くる。大多数は、実験資材の物販や、怪しげなカンファレンスの招待だ。が、最近「あなたが論文を出した分野でこのような文献が出ています」という有償サービスがある。これも推薦の一様態だ。
Google Scholar自分のCitationを公開していると、"Recommended based on My Citations" のように、Google scholarが推薦してくれるサービスもある。これもなかなかおもしろい。
あるいは、一般には、最近であればGunosyのことを考えればイメージしやすいだろう。そして現実には自分にとってはたまたまTwitterがその機能を果たしていることも非常に多い。フォローしている研究者のツイートがそのままリコメンデーションとして機能もする。
Faculty of 1000を積極的に講読出来てない日本の研究機関(の図書館)というのは、だからそういうところで根本のところを捉え損ねている。