生のふるえが織りなす音に耳を傾ける

生きて死ぬ私 (ちくま文庫)

生きて死ぬ私 (ちくま文庫)

「生きて死ぬ私」を読んだ。
クオリア説を唱えていて、メディアで取り上げられることも多い脳科学茂木健一郎の、若い頃のエッセイであった。茂木の科学者としての仕事にはあまり魅力を感じない。しかしこの本はよかった。科学者として生きる芯がくっきりと見えて、強く共感した。
繰り返し書いていることだが、私は、脳神経科学の行く先を思うとき、まずすべきことがあるだろうなと思っている。回路屋(になりたくてなれなかった男)として、脳というコンピュータは、実に魅力的に組み立てられた回路に思える。脳神経科学の一応の目標を「(人間の)知能(Mind)回路の解明」だと私はみている。そのためには現段階で技術的に実現可能な研究として、3つ明らかにしなくてはいけないだろう。

  1. 神経細胞の機能
    • 回路を構成する素子である神経細胞が、どういう機能をもっているのか。これは大枠では判明してきているように思える。
  2. 人間の脳神経回路構造
    • 脳は神経細胞一千億個の集合体である。回路を読むとは、模式図ではなく、ほんとうに個々の(既知の)素子がどう接続されているかを知ることである。これは構造(解剖学)の問題である。電子顕微鏡レベルで、ニューロンニューロンが、いくつのシナプスで結合されているか、それを脳全体にわたって観察し、回路図を描く。だから、死んだ脳でもかまわないのではないかと思う。人間を持ってきたのは、我々が興味があるのが(往々にして)人間だからである。
  3. 脳の進化
    • 生きた人間の脳細胞を研究することは、禁じられている……正確に言うと、コードに引っかかる。それでは回路をいじくりまわしてみることができない。まずは簡単な回路をやる。センサーとアクチュエータが一本の神経でつながっているような簡単な生物を使う。