殺シ屋鬼司令II

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男性も不妊治療? 精液検査は重要! 保険適用の手術で改善することも

……などという、泡沫バズまとめサイト系のような題名で始めてしまったが、実際重要なことである。


※以下とりあえず「妊娠してもいいと思っているカップルの男性は、まだやってなければ精液検査がとても重要」というかたちでの「ブライダルチェック」の重要性を、医者でもなんでもないただのシロウトが個人的にいろいろ調べてわかったことを書いている記事に尽きますので、よろしくお願いいたします。


不妊治療のクリニックというと受診するのは女性が多いらしい。しかし、妊娠がうまくいかないことに対してカップルの男性側に問題が発見されるケースは約半数にのぼるといい、要するに男性もちゃんと自分の問題として考える必要があるのだ。

不妊というのは自然妊娠を試みて、1年間成功に至らなかった場合と定義されているらしい。それを知った時、私は結構スクエアな定義だなと思ったのだが、逆にもっとファジーな定義だとかえって治療が遅れる例が出てしまいそうでもあり、これで良いのかもしれないなと納得するようになった。


妊娠を希望しつつも成功に至らないというのは、実際になかなか大変なことだ。

単に子供が出来るか否かということを超えた意味を、不妊治療は持っている。そのときひとりの人間がこの世に生まれるかどうかということが第一にあるわけだが、さらに、その両親の社会的なキャリアプランや、夫婦としての関係性、それ以前にひとりの男性や女性としての意識がある。たとえば、カップルが不妊に悩むとき、どちらも検査をせずに「自分に問題があるのではないか」とわけもなく巨大な不安だけを抱えながら生きていくのは、とてもストレスのかかることだと思う。

だから、はやくその原因の手掛かりを探すというのはとても大切なことだろう。いま不妊治療の原因や手法というのは色々あって、早めに対処することで「卒業」(妊娠・出産)の可能性が高くなる。特に男性の検査は、普段毎日やっていることをちょっとサンプルとして提出するだけでわかる。それによって、卒業に至るかどうかはともかく、カップルのストレスが激減することがおおいに期待できるわけだ。

 


精液検査は産婦人科泌尿器科でできるようだ。

 


 


この記事は実体験をベースに書かれていて詳しい。これによると価格はクリニックによるようだが保険適用可能なところを探すというのがベターかもしれない。

 


(ヒトの、ではないが)有性生殖を専門とする生物学者として私も容易に想像ができるのだが、実際、一般に有性生殖の問題はとても複雑で、なによりも何段階ものステップを経てはじめて達成される難しい過程である*1。事情もカップルによって千差万別である。だからこそ時間がかかるものだ。だが早く始めれば可能性はずっと高くなるということも事実なのである。

 


さて精液検査をした男性は、冴え渡る灰色の脳細胞状態の目の前にいくつかの数値を提示される。

それは彼のスペックである。

液量、精子の濃度、正常形態精子の割合、運動率など、重要な数値である。

生物学者としては濃度が基準よりも1桁程度低くてもなんとかなるんじゃないかと考えてしまうのだが、そういうものではないようだ。たしかに、私が普段扱っている微細藻類においては、濃度が1桁ぐらい低くても継代培養することができるが、不妊治療の場で問題となる精子は、分裂しない*2。それで例えば精子濃度が1桁低いと「乏精子」状態ということで、治療の可能性を医師と探っていくことになる。


精子濃度低下の原因として上位にあがるのが「精索静脈瘤」である。

これは、陰嚢の中で睾丸から腹腔に戻ってくる静脈に炎症が生じ、正常に静脈血が流れていかず、逆に睾丸に戻っていってしまう現象らしい。静脈血の逆流がなぜ問題になるかというと、まず静脈を冷却水のようにして睾丸を水冷しているのが機能しなくなって睾丸の温度が上がってしまうということや、老廃物や活性酸素種などが正常に排除されないということで、結果として正常な精子の発生が行えなくなるということのようだ。

幸か不幸か、男性自身に特に生活や生命に深刻な影響がただちにあるというわけではない。重度でも若干の違和感があるだけらしい。しかしそれゆえに看過されてしまうことがあるということでもある。精索静脈瘤は進行性という特徴がある。進行性ということは、現在軽症だったとしても将来的に重症になって違和感が出たりするし、また、すでに子供を授かったカップルであっても、二人目を希望した場合に男性に精索静脈瘤が進行してうまくいかなくなるという「二人目不妊」ということの原因になるようだ。


精索静脈瘤の治療には漢方薬が処方されたり、手術をしたりすることになる。日帰りの手術も一般的になって、過去には20万円ほどかかる例があったようだが、保険適用も2018年4月から効くようになって5万円程度で済むことがあるらしい。

それによって精子濃度が向上するということで、単に妊娠可能性が高まるというだけではなく、男性自身の自意識にとっても、大きな影響があるのではないかと思う。カップルの女性側にとっても、アカチャンという希望する未来への可能性が一段と高まったということであり、二人には大きなセイシンテキの高まりがあるだろうことは想像に難くない。

*1:研究つらい

*2:分裂したら大変だ。