殺シ屋鬼司令II

世界一物騒な題名の育児ブログです。読書と研究について書いてきました。このあいだまで万年筆で書く快感にひたっていました。当ブログでは、Amazonアフィリエイトに参加してリンクを貼っています。

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アーニャbotが進学校を中心に流行る現象を読み解いてみよう

元スレッドの論旨とははずれるという前置きをする。

進学校でアーニャbotが流行る、ということに、なにか無意識の興味を持った。それは、共感の萌芽のさらにそのきざしぐらいのうっすらとした手がかりの感覚だった。

アニメ「SPY x FAMILY」でアーニャが通う学校は、家柄的にも学力的にも文字通り「エリート」ということになる。いうまでもないことだが、英国のパブリックスクールを模している。もちろん、通う年齢や、性別の項目はいくつか現実のパブリックスクールとはズレがあるとはいえ、雰囲気の描写を借りてきたということだと思う。

そのパブリックスクールみたいな学校に、アーニャは自分の「特殊能力」であるエスパー(読心術)をテコに、どうにかこうにかサバイブするというサスペンスコメディとしての側面がある。もちろん、そこに義理の、もしくは演技の、父母であるロイドとヨルの特殊能力も加わりつつ、全体としては、単に血縁によるものではない、ある種「構築」される関係としての「家族」を描き出すシットコムシチュエーション・コメディー)の伝統をひきついでいるといっていい。要は、スパイものの衣装をかぶせた「フルハウスだ。

特に、以前読んだ次のツイートには「SPY x FAMILY」の見方を180度転換させるインパクトがあった。

そうなのだ。「SPY x FAMILY」というのは結局、「特殊」な結構ではなくて、ファミリーのなかで駆動する関係というものを抽象したドラマだということを教えられた。

実際に結婚して子供を授かり育てるという人生に投げ込まれてみれば、この生活はなにも自動的なものはなく、まちがいなく意識的に日々のそれぞれのうつろいやふるまい、おこないを、ひとつひとつとらえなおしては再度構築し直していこうとする、たいへんないとなみであった。

社会的な意識や通念はもはや前提とし得ず、粘り強く、日々、己の期待と断念と無念と残念と失念が繰り返されていく。

そうしたことが念頭にあって、アーニャbot現象を聞いたときに、

「もしかするとそれはなにかの比喩・抽象なのだろうか?」

という連想があった。

作品を比喩として読み解くというのは、その作品に、現実の現象やひとの実体験、自意識を重ねて見るということになる。それも、作品を駆動させる道具立てが、現実に訴えかけている場合がおおいだろう。

SPY x FAMILY」はサスペンスだから、何よりも、アーニャのおかれた立場に、進学校に通う若者が自分をなぞらえているはずである。そして、サスペンスの道具立てとして機能しているのは、アーニャが名門校に通うという「場違い」さである。

では、どういうことか? ここまでかんがえるとそれほど難しくはない。

(アーニャbotのお気持ち)

  1. 「場違いな進学をしてしまったのではないか」
  2. 「それでも自分にはなにがしかの能力があってその中でうまくやっていきなのではないか」

という、相反する自意識のあらわれだ。

自分の行った高校も、あとから聞くと、それなりの自負をもって入学したひとが多かったらしい。そんなこと、なかにいるあいだは明示的に話したことなんてなかったが。

文字としてあらわれている例でいえば、高校の同級生だった柿添のnoteだ。

高校に入ると、優秀だと思っていた自信が全て崩れ去った。
自分の人生を振り返る(高校生編①)|暇なおじさん3.0|note

自分はそういうのがあったのかなかったのかわからない。あったのかもしれないが単純に覚えていない。

自負しているひとがいるのであれば、それを負い目、「場違い」に感じるひとも、同時にいるのだろう。

そしてそこに、アーニャbotが目を覚ます。

自分は、ここにいていいのだろうか。

これは自分もたしかにある時期に思っていた。いや、ある時期というのは言い過ぎで、もしかするといまもどこかで思っているような気がする。しかし、考えてみればこれも「新世紀エヴァンゲリオン」でもさんざん繰り返された主題だ。

そして、アーニャbotのお気持ち2の、なにがしかの能力というのも、やはりいうまでもなく、そのまんま厨二病としていわれている、青春期における自我の芽生えの機制のことだろう。

ある程度「進学校」というところにたちもどって問題を考え直せば、そこにあるのはお受験でもある。試験によって運命が決まる。そうすると、「SPYxFAMILY」は、その問題を正面から描いた「二月の勝者」の裏面か、とも気がつくのはかんたんだ。

Twitterに投稿した原案